プロローグ

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プロローグ

 今にも雨の降り出しそうな雲が上空を覆い、雲間からは稲光が瞬いている。  全てを塗りつぶす宵闇。その中に佇む家屋の中では凄惨な光景が繰り広げられていた。  部屋中の空気は多量に流れた血液により鉄臭く、嵐が部屋の中で暴れまわったかのように家財は壊れ、散乱している。  その部屋の中で血を流して床に這いつくばる男が一人。彼の目の前には闇に溶け込むような黒い甲冑に身を固めた騎士が立ち尽くしていた。 「なぜだ…… なぜお前が……」  男は冷たく光るその銀の仮面を見上げ、掠れる声を絞りだし問うた。だが騎士は答えない。銀仮面からわずかに覘くその瞳に宿る感情は悲しみ。  その騎士の周りにいる粗野な格好をした男達が彼を見下ろし嘲笑している。 「頼む…… やめてくれ…… なんでもするから……」  血が、生命の源が抜けて出ていくのを感じる。もう、助からない。 『俺が、何をしたというのだ……』  もう目が見えない。すべてが暗闇に飲まれていく。 『人間が平和に暮らせる世の中を作りたかっただけなのに……』 「必ず……戻ってくるぞ……!」  その断末魔の声を聞いて粗野な男達はさも可笑しそうにゲラゲラと笑う。  そして、一人の男が歩み寄り、剣を振り上げた。  グシャッ!!  そして彼の命の灯は、一度は完全に消えた。
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