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「急げ!このままだと機能が停止するぞ!!」 「今すぐ冷却が必要だ!」 「くそっ、救助隊はまだなのか・・・」 それは予想外の出来事だった。 熱を帯びたと分かったが最後、 自動的に溜まり始めたエネルギーがどんどんとヒートアップして行き あっという間に手の追えない状態になってしまった。 数々の怒号が飛び交う中、容赦無く迫り来る現実に絶望し、 深く刻まれた私のシワは力なく垂れている。 「どうしてこんな事態が起こったんだ」 「一体どれくらい我慢したんだ、幾ら何でも限界を超えているぞ」 なんて情けないのだろう。 紛れもなく、この危機を招いてしまった原因は私の怠惰によるものだ。 忙しい日々に言い訳をしてあえて大事なモノへ目を向けることを避けていた。 その結果、私のうちにある約10億もの命が灼熱の海の中をもがきながら出口を求め彷徨い続けている。 彼らをこのまま無駄死にさせるわけにはいかない私の焦りが先走り、 汗とはまた違ったものでじわりと濡れる。 もういっそこの地獄から解放してくれ!!! そんな彼らの悲痛な叫びが聞こえてくる。 やがてその状態に耐えられなくなったものから次々と押しあがって行き、 そのいくつかが私の方へ向かって雪崩込んでくる。 ーーーもうダメぇ~っ! 小さな四角い画面から一層大きな悲鳴のような高い声が響いた途端、 私の中で何かが弾けた。 『ゔっ!!』 同時に低いうめき声が沸き起こり、私が抱えていた約10億の命が 一瞬にして散開してしまった。 最期まで灼熱の海の中を泳いだ無数の抜け殻が濃色に白く濁った状態で私の下に散らばる。 無念なのにも関わらず、苦しさから解放された私はあろうことか言い知れぬ快感を覚え、少しばかりの倦怠感と罪悪感にのまれながら熱の冷めた自身を休めるのであった。 この辛く虚しい事象を私たちは何度も繰り返し、何度も見てきた。 恐らくこれから先も同じ光景を見続けることだろう。 どうか覚えておいてほしい、君たちが生まれるもっと前の話・・・ 私が、何億の魂が、その多くの犠牲の上で今ここに在るということを。 あぁ、失礼。私が何者なのかすっかり申し遅れてしまっていたね。 私の名はそう、金タ・・・ーーー。 おしまい
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