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第三章 アンタレス
学会が行われる街に着いた翌日、私は学堂へ向かう前に身嗜みを整えていた。いつもかけている眼鏡の曇りをしっかりと拭いて取り、短く纏めている髪に櫛を通す。いつもの修道服の袖に腕を通し、鞄から取り出した手のひらほどの幅の長く赤い布、ストラを首にかける。ノートの入った鞄も持ち、これで学会に出る準備は整った。
本来ならばストラは、教会での儀式の時にしか着けないものだけれども、学会というのは私にとって儀式も同然だ。そのことは司教様にもきちんと説明をして話を通してある。
部屋を出て、学堂併設の宿舎の廊下を歩いていると、私と同じように他の街から出席する学者や、ここに住んでいる学生達が何人も目に入る。その中にはそろそろこちらも顔を覚えてきている人などもいて気が引き締まる。
宿舎を出て学堂に入ると、ちらちらと送られる視線に気づいた。きっと私の姿が物珍しく、好奇の視線を送らずにはいかないのだろう。私としても、修道服を着ているだけでも目立つというのはわかっている。そこにストラなどかけているのだから、目立ってしまうのはなおのことだろう。けれどもそれは不快なことではなかった。目立てば目立つほど良い。発表する論文を印象づけるには、内容は勿論だけれども、発言者の姿が奇異であればそれもまた人の心に楔を打つことになるのだ。
学会が始まる。皆それぞれに席に着き、順番に壇上に上がって論文を読み上げていく。星などの天体に関する新しい発見や見解の話を聞くのは、それだけでも心躍る物だけれども、心躍れば躍るほど、様々な学者の話をアマリヤさんに聴かせたいと思ってしまう。けれども、連れてくることなど出来ようはずもないのだから、私は少しでも学者達の話を覚えていこうと耳を澄ませる。帰ったら、アマリヤさんに話して聞かせるのだ。
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