第三章 アンタレス

2/2
前へ
/7ページ
次へ
 そうしているうちに私が発表する番になった。席を立ち、静かに歩いて壇上に上がる。持っていたノートを広げて、挨拶をしてから導入、本文へと話を展開させていく。すると、聴衆の間にざわめきが広がった。 「こういった観測の結果、空で輝く星から届く光は、公転によって僅かに向きを変えているのです。 それにより、星を読んで計算されている現在の暦には僅かだけれども確実な誤差が有り……」  ひとしきり発表が終わった後には、質疑応答がある。私が話した内容は、きっと大勢の人にとって受け入れがたいものだったのだろう、多くの反論が降りかかってきた。しかし、こうなるのはわかっていた。私はどんな反論が来るかあらかじめ予想していたし、実際なげかけられるものは予想の範囲内だったので淀みなく答えを返していく。  こういった反論を受けるのは、正直に言ってしまえばかなりの負担だ。だけれども、私は自分たちの研究をなんとしてでも歴史に刻みつけたかった。絶対に、何があっても、アマリヤさんの名を歴史に残すのだ。彼が確かに存在していたという証拠を、歴史という大きな流れに。  結局、私の発表はあまり芳しくない反応が多かった。けれども、このまま研究を続けて人々にわからせるのだ。アマリヤさんがどれだけ偉大な人で、かけがえのない人だったのかを。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加