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「おっと。大丈夫ですかぁ?」
ぽよん、とした大きな腹が目の前にあったかと思えば、上から声が降ってきた。
顔を上げれば見慣れた、ふくふくしい顔が微笑んだ。
「す、すまない。前を見てなかった………そっちこそ、怪我はないか?」
「大丈夫大丈夫ですよぉ。先輩小さくて軽いから」
同じ部署の後輩、大塚 渉(おおつか わたる)。2メートルもの高身長に某黄色い熊の妖精のような………端的に言えば肥満体の身体。
一見愚鈍に見えるが、彼は若いのに仕事が出来る。頭も悪くない。性格も温厚だ。
なので僕は密かに彼を頼りにしている節があるし、彼の方も結構懐いてくれている……と思う。
「人を小動物扱いするな」
これでも日本人の成人男性平均の身長はあるんだからな!
「いえいえ。ボクに比べたら先輩なんて」
そう言ってうふふふと笑う顔は全く、あの熊さんにそっくりだ。
「そう言えば。先輩どうしたんです? そんなに慌てて……あぁ」
「?」
「………そういえば。さっき課長が先輩のこと探してましたよぉ」
「え! あ、そうか」
こんな所でゆっくりしていられる訳もなく、僕は彼に軽く礼とさっきの詫びを口にして再びその場を後にした。
「気をつけて下さいねぇ。……だれかさんにも」
最後何を言っているのか分からなかったが、とりあえず気に留めず走った。
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