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気がつけば、そんなことをつらつらと目の前の女に話して聞かせていた。
自分でも不思議だったのが、別に武勇伝とかいい思い出とかでもなくて、むしろ黒歴史をこうやって知り合って間もない人間に話している事だ。
「人は外見に寄らないんですねぇ」
今度はしみじみと言われた。
「容姿に似合わず女々しくてヘタレってことですよ」
「………うるせぇよ」
間違ってないからムカつく。
俺は自分のこの性格を環境のせいにするのだけは違うと思っているが、まぁ厄介な性格なのは間違いない。
でも俺だって好きな奴に好きだと言いたいし、付き合って幸せになりたいししたい。
それがあっさりと出来ないから思案してるし、こうやってこの女に探りを入れている現状だ。
この女を取り上げたら、今度こそ龍之介に嫌われるだろうか。
それはとても怖い。でもやらなきゃあいつは結婚する。結婚して子供を作って。毎日毎日、嫁と子供の為に仕事をして。小さな幸せを大切に優しくて暖かい家庭を築いていく。
………なんて虫唾が走る。
その隣に絶対俺はいない。あいつの人生の中で常に隣を陣取ってきたのは俺なのに。
邪魔な女達を蹴散らして、時に地味で遠回しな嫌がらせをしてこの場所を死守してきたんだ。
女だから、子どもが産めるからと言ってなんでぽっと出の牝共が俺から大切な人を奪うんだよ。絶対に許さねぇ。
「男の嫉妬は醜いって言うのが通説ですよ」
頬杖付いて注文したジュースを啜る目の前の女を俺は敵と判断するか考えあぐねていた。
「ゴールドのペディキュア」
「はぁ?」
「あれ、あたしが塗ったんですけど」
そうだったな。ふざけた真似しやがって。
「彼、丈さんがそれ見て急に不機嫌になったとか、変なこと言い出したって心配してましたよ? 国際結婚したいとかどうとか」
「しねぇよ。あいつは昔から本当に鈍感なんだ」
「あはははっ、お似合いじゃないですか」
「薫子ちゃんは俺を怒らせたいのか喜ばせたいのかどっちなわけ?」
「どっちもないですね。あたし貴方のことタイプじゃないですし」
なんだ俺たちやっぱり気が合うじゃないか。
「それで誤解させちゃったかも知れませんけど」
誤解?
ありゃあ思い切り宣戦布告だろうがよ。
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