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怠惰と惰性の狭間の女とは
『さっさと結婚でもして家を出なさい』
そう言われて無理やり入れられたお見合いやら結婚相談所の予定。あたしは盛大にため息をついた。
別に結婚願望が無いわけじゃない。けどさ。かと言って慌てて男探して捕まえて既婚者という称号を得たいって訳でもなくて。
つまりどうでもいいってこと、なんだよねぇ。
派遣だけど仕事も収入もそれなりだし、実家住まいで家賃かかんないし。………あ、だからこうなるのか。
最近の女子は益々婚活に迷いや躊躇いがなくなってきて、婚活市場も若年化しているってなんかで見たかも。
その時は、みんな結婚したいんだねぇ。としか思わなかった。でもこの身を置いてみて分かった。
「………結論。女は顔と胸と若さだって事ね」
項垂れるあたしに幼馴染のF子とC美が顔を見合わせた。
「今さらそれ言うわけぇ?」
そういったのはF子。バツイチ子持ち。結婚は19歳と早かったけど4年前に離婚。男も結婚も懲り懲りだとジャニオタに進化して2年目突入。
「そりゃわかってたけど!わかってた。でもさぁ」
あんなに明確に現実見せられたらショックや凹む通り抜けて呆然となるっつうの!
「それは単なる傾向よ!諦めずに自分磨きしていたらいつか実を結ぶのよ」
そう熱弁を振るC美は私を婚活に引きずり込んだうちの一人でもある。
彼女は婚活歴5年。この世界では大ベテランらしい。頭の先からつま先まで綺麗に華やかに飾ることを怠らない。
さらに最近はヨガとかなんかワイン?ソムリエ?あたしにはよく分からない世界の住人になりつつある。基本的にポジティブで熱血派。
「出たぁ!自分磨き」
「あ、この場合の自分磨きってね………」
「その話って長くなる?」
2人は正直、なんであたしなんかと友達でいてくれるんだろってくらいスペック高いの。美人だし、仕事も派遣のあたしと雲泥の差。
「ともあれ、うかうかしてられないのよねぇ………私、子供欲しいし」
人差し指のネイルを眺めながらC美がぼやいた。
「あ、そう言えばこの前の人。アレどうなったの?」
「ああ。あの人」
以前、C美に無理やり連れていかれた婚活パーティーで知り合った人の事だ。
「結構良さそうな人だったじゃん」
確かに細身でイケメン、身長もそこそこで。少し神経質っぽいところがありそうだけど、話しやすい人だった。
「年収はいくらくらい? 職種は?」
「もしかして長男だったりする? 親は? どこ住んでんの?」
うわぁ二人とも凄い質問責めしてくるじゃん。身をあんなに乗り出して………こ、怖い。
「え、えええ。そういうの忘れちゃったなぁ。あんまり気にしてなかったから」
「はぁぁぁ!? 大事でしょうがぁ!」
C美が特に必死すぎて冷や汗が止まらない。
あたしは言えなかった。
彼とは既に何度か会っていて、とりあえず付き合うことになった……なんて事を。
さて、あたしは2人の女友達に対してどう誤魔化そうかと脳みそフル回転させた。
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