婚活とはひとつの出会い也

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婚活とはひとつの出会い也

姫乃さんとはとりあえず順調にお付き合いしている………と思う。 しかし、正直ピンと来ないなというのが本音なんだよなァ。 いや彼女は悪くない。僕には多分充分すぎる位の良い娘なんだ。 だいたいさ、35超えてる男の所に20代の子が来てくれるなんて考えてなかった。僕は婚活初心者だったけれど、事前のリサーチというか勉強は多少してきたんだ。 婚活というのはプロフィールという情報ありきで進む所も多い。男は年収、女は年齢と言った具合にだ。 長い事こういう世界に入り浸れば歪む事もあるだろうな、というのが始めてみてすぐに分かった。 普段婚活サイトを眺めていたが、気まぐれと同じく婚活をしていた同僚の誘いで婚活パーティというものに参加してみた。 ………とにかく疲れた。まさしく回転式で行われる面接会。そう、あれは強制面接会だ。 数分で効率重視の方法で一体相手の何を知ることが出来るのだろうか。 と訝しんだ開始前の僕は力一杯殴りつけたくなった。 数分で充分だ。むしろ長い。参加者がやたらとキャラが濃いのだ。 あとアピールがすごい。まるで餌を見つけてロックオンした猛禽類のようだった。 距離がやたらと近い人もいたな。初対面でいきなり手を握られ、その手に唇寄せられた時は悲鳴をあげそうになった。 フリータイムになるとまた地獄だった。瞬く間に囲まれて、同性から睨まれたり女性同士の睨み合いを見て見ぬふりをしたり。 こっちも女性にはあまり無礼な態度とか取りたくない。女性には紳士的に振る舞うのが男という家で育ったから。 しかし、それにしても呆れ果てるくらい失礼な質問をしてくる女性もいた。 どんな家庭を築きたいかとか、子供のこととか。そういうのは良いんだ。想定内。まぁ実際そういう曖昧なのって答えにくくてあんまり好きじゃあないけど。 酷いのは両親の年齢や健康状態、貯金額まで聞いてくるのが正直カチンときた。 こないわけないよな。 そろそろ作り笑いも限界で、表情筋が痙攣を始める頃に僕は女性達の輪から抜け出した。 いっそうのこと体調不良で帰ろうかと思っていたら、同じようにぐったりとしていた女性がいた。 それが姫乃薫子さんだった。 彼女と話をするととてもホッとした。 そうそう。僕が普段接している女性っていうのはこんな感じなんだ。人を美味しそうな餌みたいに見ないし、失礼だったり面倒臭い質問もしてこない。 何もかも普通。それがホッとする。 年齢が離れているから、話題が難しいかもと思っていたけれどそんなこともなかった。 彼女は漫画やアニメやゲーム等に詳しいらしい。偶然僕が昔読んでた漫画を彼女も好きで、そこから話題は広がった。 姫乃さんはとにかくよく笑う子だ。明るくて、たまに妙なテンションになるが見ていて楽しい。 一緒にいて幸せになれそうなタイプだと思う。 でも………。
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