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凡人には、理解出来ん世界だ。
だけどこの子の言う通り、そういう事なんだろう。
そうじゃなければきっと、あんな誰も気付かないかもしれないアナグラムなんつーもんを、執筆名に仕込んだりしないだろうから。
そして興奮が落ち着き、梓の顔面がようやく軽くにやけるだけになったので、二人で当初の予定通り初詣へ。
昨日に続き今日も完全オフなため、梓はきちんとメイクも施した、女王様モード。
その為神社に向かう途中、漫画みたいに目がハートマークになった生ける屍を大量生産した。
恐るべし、キラキラビーム!
でもこの先どんなライバルが現れようが、今の立ち位置を譲る気なんて一切無い。
それに別に俺からしてみたら、この子の見た目の美しさなんざ、今さらどうでもいい事だ。
バイトに来てくれている時のおさげ頭に伊達眼鏡姿の彼女も、それこそ知り合った頃の、だるっだるに伸びきったジャージにもさもさ頭、怪しいサングラスなんて格好のコイツですらも、愛しいと思えたんだから。
「三橋さん、駄目ですよ?
ここは神様の通り道ですから、私達人間は端を歩かないと!
あと入手水舎の御手水でちゃんと身を清めてから、お参りしましょう」
右手で柄杓を持ち、左手を浄める梓。
更に持ち変えて、今度は反対の手も同様に。
それから彼女は手で受けた水で口内を浄め、それから柄杓を最後は両手で持ち直し、そのまま立てるようにして持ち手を残った水で流した。
まるでお手本のような綺麗な所作に、思わず見惚れた。
それと同時に、これまでいかに適当に詣でていたかを、思い知らされた。
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