希望の橋に出発します

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希望の橋に出発します 「もしもし?もしもし?」 誰かに起こされて猫の琥珀は目を覚ましました ここはどこだろう? 周りを見ても思い出せません 「君はどこまで行くの?」 聞かれて見上げると真黒な犬がそばに立っています 「うわ!い。犬だ!」 思わず逃げようとする琥珀に犬はそっと言いました 「心配はいらないよここは希望の橋駅だよ」 そう聞いて琥珀はようやく自分がいま」どこにいるのかわりました 「そうか。希望の橋なんだ私死んじゃったのね」 希望の橋駅はあらゆるペットが亡くなった後に行く駅です そこからまた次の希望の橋駅、そして次の希望の橋駅、ずっと希望の橋駅しかありません その子その子に出会える飼い主さんのいる駅は違うから すぐに二駅の子もいれば百駅先の子もいるのです そしてそこに着くとまた大切な人に会えるという駅なのです 琥珀は大好きなお母さんのことを思い出しました 何日か前から具合が悪くなった 琥珀のことをとても心配してくれたお母さん 元気に見せようとしたけれど、どうしてもできなくて、悲しい顔をしていたお母さん きっとまだ泣いているのかもしれません そう思うと琥珀も急にさみしくなって涙がぽろぽろ出てきました 「あれ?ないてるの?泣いちゃだめだよ早くお母さんたちを元気にするなら僕たちは泣いちゃだめだよ」 黒犬はそういうとそっとはんかちを貸してくれました 「切符は持ってるよね?」 そう聞かれてもっているカバンの中を見るとたくさんのおやつや、おかあさんの手紙やら、大好きなおもちゃやらぱんぱんに詰め込まれています きっと旅に出る前におかあさんが持たせてくれたのでしょう がさごそとその奥をみると、一枚の切符がありました 手に取るとお母さんのくしゃくしゃの泣き顔が映っています 横から覗き込んだ黒犬は 「わあ、君のもすごいね」 というと自分の切符を見せてくれました そこにはおなじようにぐしゃぐしゃのお父さんの顔が映っています 「この切符はね大好きな飼い主さんの思いがうつっているんだよ。みんなだいたいこんな顔なんだ。でもね、ありがとうって言う顔なんだよ」 「ありがとう?」 「そうさ、みんなうちにきてくれてありがとう。またねっていう顔なんだよ」 そう聞いて琥珀は最後に聞いたお母さんの声を思い出しました 「琥珀ありがとうね」 確かにそう聞こえたのです そうかみんなその瞬間に切符を手に入れることができるんだ 琥珀はそれを聞いておかあさんにまた会える日をおもうとちょっぴりうれしくなりました 「さあ・汽車が来るよ」 黒犬はホームに並びます ピー! 汽笛と共に虹色の汽車が入ってきました 琥珀も犬や猫やトカゲやウサギとかあらゆる仲間と共に乗り込みました ふかふかの椅子に座るとバッグから大好きなおやつを取り出して少しだけ食べます 「どのくらい先なのかなあ」 お母さんに会える日を思って窓の外を見るとあまりきれいな格好でもなく荷物も持っていない犬たち猫たちが並んでいます 「あれはなに?」 と黒犬に聞くと 「あれはね、今回はお父さんたちに会えなかった子たちだよ。僕たちと違う列車なんだ。切符がないからね・でも僕たちより早くまた次の世界に生まれ変わって切符を探すのさ。 次の世界ではきっとお父さんたちに会えるよ」 引率の先生のようなトラのおじさんに連れられてその子たちは黄色い列車に乗り込みます この世界では出会えなかった大好きな人に、また次はあえるといいなあと 琥珀は願いました ホームに太ったわにの駅員さんがやってくると大きな声で叫びます 「希望の橋駅から出発します〜」 琥珀はこれからまた会えるお母さんの笑顔を早く見たいなと思いました 龍翔 作
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