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約束された土地、楽園〈イヴィナス〉。大いなる旅を経て、やがてはすべての民が安息の地へと辿り着く。
子供から大人まで、誰もが知る御伽噺だ。かつては国を挙げてまで調査されたが、その全体像はおろか、手掛かりすら見つけることはできなかった。以来、多くの旅人がそれぞれの思いを胸にイヴィナスを目指したが、今となってはその姿も珍しい。
それでもいまだに歩き続ける者が、少なからずいる。小さくまばらな噂を頼りにそこを目指す目的とは、名声か富か、はたまた純粋な探求心か……。
この少年はそのどれでもなかった。まだどれにも当てはまっていないと言った方が正しいか。王立探険隊として国に尽くした父と、幼いころ母から聞いた御伽噺の世界、イヴィナス。そのそれぞれへの憧れと期待が、少年の一歩を踏み出させるきっかけとなっていた。
しかし、一歩足を踏み出したならば、そこには危険がないとも限らない。憧れと期待だけで渡り歩くのが容易なほど、外の世界は都合よくできていないのだ。
頭で理解しているつもりだった少年は、身をもって知ることとなった。己の旅路がどれだけ険しく、先が見えないものであるのかを……。
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