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「は? 違いますよ、百“年”に一人ですよ」
「え、待って待って。俺、百“人”に一人って聞いたもん。そんで書いたもん、書類に。“百人に一人の野球の才能”って」
「違いますよ、“百年”って伝えましたよ、我々」
「えー嘘だー、言ったもん“百人”って」
「言ってませんって!」
「ちょ、ちょっと待って、俺資料室から書類取ってきます!」
言い合いになりそうな天使と天使某を制して、もう一人の天使がモニタールームを飛び出した。
しばらくして資料を持って戻ってきた天使の顔色は、蒼白としていた。
「野良球男……“百年に一人の野球の才能”じゃなくて、“百人に一人の野球の才能”になってます……」
「えーーーーー!!!!」
天使たちはズッコケた。
「え、だから言ったじゃん、そう書いたって!」
一人気を吐く天使某に、他の天使たちは喧々諤々。
「“年”と“人”じゃえらい違いですよ!」
「マジで可哀想じゃないですか!」
「どういう耳してんですか!」
「えー、だってあの時……クソ忙しくてごちゃごちゃしてたしぃ……」
天使たちの鋭い剣幕に、天使某はたじたじになる。
「……先輩、提出する前に最終確認しました?」
「し……してない……」
ついには声も態度も小さくなり、今にも消えんばかりだった。
「つまりは、天界の手違い?」
「そりゃ百人に一人だったら……せいぜい一つの中学校や地区で騒がれる程度?」
「高校級とも全国区とも、はたまたプロ級ともいかなかったって話か」
「きちんと付与できていれば……野球界の英雄が見れたかもしれないのに……」
自分たちが野良球男にしでかしてしまったミスに、天使たちはずーんと沈み込んだ。
「え? 何? めっちゃ沈んでる。ごめんって。おーい……」
野良球男をモニタリングしたわけでもなく彼に感情移入できない天使某だけは、能天気に天使たちに呼びかけながら煙草を吹かしていた。
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