14人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
野良球男
やがて日本のベビーブームは去り、天界も落ち着きを取り戻し始めた。
神様も無事に職場復帰し、天使一同で下界を観察する余裕も出てきた。
しばらくすると、人間界は未曾有の政治不信から世界的不景気に陥り、あの日本でのベビーブームが嘘だったかのように、今度は逆に子供を作ることを控える風潮が訪れた。
それなりに仕事はあるが、あの嵐のような繁忙期と比べれば雲泥の差である。
「子供は授かり物なのにねぇ」などと忙しさで文句を言っていたことも棚に上げ、呑気な言葉もあくび交じりに出る始末だった。
こういう時代──少子化が進み先行きの見えない不安な中で、世の中に望まれるもの。それはわかりやすい英雄である。
「そろそろ英雄の登場も見てみたい頃だねぇ」
ある天使が口にすると──
「あ、そういえば“百年に一度の野球の才能”の子っていなかった?」
「いたねぇ、見てみようか」
「じっくり観察してみたいな」
そんな具合で、天使たちはその男の子をモニタリングしようという流れになった。
最初のコメントを投稿しよう!