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汗が染み込んだツナギを脱ぐと、一気に体が冷えていく。
扇風機をつけて、べたつく髪の毛が頬にくっついて、それを手で払う。
机に置いてあった汗拭きシートで顔と首の汗を拭きとると、シトラスの香りに私は包まれた。
部屋着に着替えると、しだいに緊張してきた。
少し吐き気もするが、自分で決めたことなので、今日こそ告げる。
「よっし!」
軽く頬を叩いて、気合を入れると下におりていく。
階段を一段ずつ下るごとに、今日の料理がカレーであるのが明確になってきた。
私の定位置になっいるテーブルの真ん中に座ると、正面に母と父が並んで座る。
母の手には、彩り豊かな野菜のサラダに、市販の杏仁豆腐が握られ、私たちに配られる。
真ん中に作りたてのカレー鍋が置かれ、平皿に艶々とした綺麗なご飯が盛られていく。
父は一旦お酒をやめると、スプーンを握り美味しそうにカレーを頬張る。
そのときも、顔を上下に少し動かして、美味しいというアピールをしてきた。
カレーが私の前に置かれる。 スプーンを握るまえに、深く深呼吸を済ませ、最初の一言を発した。
「あの、父さん、母さん……話があるの」
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