プロローグ

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 朝の挨拶を野菜に済ませると、次はお水をたっぷりと乾いた地面に注ぐ、日中の気温が高くなりつつあり、風も適度に吹いている。  すぐに土の水分が無くなってしまうので、気持ち多めにあげている。    ラディッシュは土から赤い顔をのぞかせ、食べごろを告げていた。  綺麗な緑色の葉っぱの裏に、小さな虫さんが集まって会議をしているが、今日はいったいどんな内容なのか、とても気になる。 「ふん♪ ふーん♪」  オリジナルの音楽に合わせて、じょうろを左右に揺らしながら雨を降らせる。  このときは、自分が野菜の世界の魔法使いになれたような気がして、とても楽しい。  小さな畑だが、管理は私が率先して担当していた。  やりなさいとも、やらなければならいといった命令や義務ではなく、私の意思で行動している。  だって、こんな出来事を朝に感じられるのは楽しくもあり素敵なことだと感じていた。  土に汚れるのは嫌いじゃない、むしろ好きなほうだ。    虫も蜘蛛やゴキブリなど、特定の虫以外は苦手意識はなく、よい話し相手になってくれている。  虫だけでなく、蛙や鳥も例外ではない。  冬は雪に閉ざされるが、白銀の世界にも話し相手はたくさんいる。  特に夜の常夜灯下に映える粉雪は、いつも私を別世界へ誘ってくれた。  
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