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進路
梅雨が明けるころになると、私の日課に新たな任務が追加される。
それは、朝採り野菜の収穫を任せられた。
梅雨の前も収穫をしていたが、それほど多くの野菜は収穫できなかった。
暑さが増してくると、野菜も活発に成長し、収穫の目安が近づいてくる。
小さな畑なので、売る量もなくほとんどが家庭内で消費された。
稀に、ご近所さんに配ったりもするが、大抵の家でも野菜を育てているので、珍しい野菜などを栽培するなどの、きっかけがなければ、配ることはあまりない。
「よいっしょ!」
雪解けが終わり、畑をトラクターで耕してから春に植えた蕪、柔らかくとても美味しい。
オクラは私の腰ぐらいまで成長し、もう少しで花が咲き始める。
枝豆は肥料は多くあげない、とても強い野菜だ。 聞いた話によると自分で栄養をつくれるそうだが、それは凄いと関心した記憶がある。
「茉莉! 採れたら持ってきて!」
「今いくー!」
両手に野菜を持ち、家の前の水道で土を落とすと、扉をあけて母に手渡す。
朝ご飯にはならない、いつも夜のオカズとして食卓を彩ってくれる。
私は手をよく洗い、爪ブラシで爪の中まで洗い流す。
タオルで拭き終えると、制服に着替えて学校に向かっていく、今日は父はいない、朝から地元の有志が集まって田んぼや公園の草刈りをしていた。
市から時給もでるらしいが、あまり父は乗り気でない。
「いってきます!」
元気にあいさつをして家をでる。 朝の涼しい時間帯が終わると、とたんに暑さがましてくる。
「おはよ! 茉莉」
いつもの場所で待っていると朋絵が挨拶してくれた。
「おはよう! 朋絵」
つい先日、朋絵は念願の想い人に想いを告げると、良い返事をもらえたようで、今は二人楽しく過ごしていた。
私との時間は凄く減ったけれども、幸せそうな朋絵を見ていると、私も幸せになれた。
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