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二人はゆっくりとご飯を楽しんでいた。
私はまだ少しだけ稲が残っている田んぼの中央へ行き、稲の中に入っていく。
バッタが一斉にジャンプで私を出迎えてくれる。
私は更に嬉しくなり、申し訳ないと思いつつも、一度やってみたかったことをした。
それは大の字になって、田んぼに寝っ転がることだ。
「失礼しまーす」
ゆっくりと、そして大胆に寝そべる。
背中がひんやりとしており、倒れた稲が頬を刺激してくる。
土の香りがより増し、一瞬の静寂が訪れたかと思ったら、風でこすれ合う稲の音が耳に届いた。
私は空を見上げる。
そこにあったのは、黄金色の稲が空にあり、その上をトンボが優雅に飛んでいた。
初めて見た景色だ。 とても美しく不思議な光景だった。
稲の向こう側からは、父のコンバインのエンジンが始動する音が聞こえてくる。
ディーゼルエンジンの力強く、そして頼りになる音だった。
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