進路

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 凄く元気を貰えた気がする。 すぐに学校から連絡が入るだろうから、私は帰ったらさっそく親に伝えようと決めた。  だって、私が選んだ道なのだから。 恐怖心は残ったままだが、自ら扉を叩かないことには、なにも始まらない。   肩の荷が少し降り、軽くなったように思え、帰りは空を見上げながら歩いていく。  今日は朋絵に一緒に帰れないと言われた。 美術部に所属する彼女は、秋の県主催の美術祭に向けて準備を進めていた。  また、最近は帰るとき、おおよそ彼氏と一緒に帰る機会が増え、私はいつの間にか一緒に帰ろうと誘うのを遠慮している。 「ただいま」  庭に父の軽トラックが無い、おそらく田んぼに出かけているのであろう。  母の乗る車もないので、夕ご飯の買い出しに行っていると推測した。  深呼吸を数回繰り返し、自室に戻ると素早く着替えを済ませる。  年頃の女子中学生には見えないような、ボロボロのツナギを着て、畑に出かけた。 「ただいま!」  最初に返事をしてくれたのは、手前の枝豆が風の力を得て左右に小さく揺れた。  まだ暑さが残る時間帯だが、私は急いで草むしりを開始する。  除草剤は絶対に使わない、ついでに農薬も使いたくないので、お酢を水で薄めた液体を、定期的に噴霧しているが、やはり薬には敵わない。  小さな虫を殺さないように、払いのけると、先日芽が出たばかりの野菜がなぜか土に埋まっている。 「はぁ……やっぱり何か対策しないとなぁ」  犯人は分かっている。 ネキリムシだ。  柔らかい芽を斬って土の中へ運んで食べる夜蛾(やが)類の幼虫の総称で、一発で野菜が死んでしまう。  付近の土を掘り起こすと、ウネウネとした幼虫が出てくる。  また、夜に活動するので、薬を使っていない場合はとても対策が難しい。
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