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ネキリムシの対策は別に考えるとして、今は雑草を丁寧に抜いていく。
この時間は、あまり何も考えずにいられるので、とても助かる。
しかし、父の軽トラの音が聞こえてくると、一気に緊張してきた。
父が帰ってくると、もう少しで母も帰ってくる。 最初にお風呂に入りたい父と、その間にご飯を作ってしまう母、温かいご飯を提供したいと、ちょっとした気遣いらしい。
作業を一通り終えて、手袋を脱ぐと汗で蒸れた指先が、外気に触れてとても気持ちが良い。
外の水道で手を洗っていると母も帰宅した。
マイバッグに入れられた食材で今日はどんなご飯をつくってくれるのだろうか。
「ただいま」
「おかえりなさい。 服早く着替えてきなさい」
トントンとリズムよくまな板と包丁が奏でる音楽が、母の機嫌の良さを表していた。
父は先に炙った煮干しを肴に、日本酒を先に飲んでいる。
いつも決まった銘柄で、甘口が特徴的らしいが、私はまだまだ飲めないので、あまり興味がない。
しかし、炙った煮干しの香りは好きだ。
夕暮れに漂ってくるこの匂いが、私はずっと前から好きでたまらない。
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