進路

1/21
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ

進路

 梅雨が明けるころになると、私の日課に新たな任務が追加される。  それは、朝採り野菜の収穫を任せられた。  梅雨の前も収穫をしていたが、それほど多くの野菜は収穫できなかった。    暑さが増してくると、野菜も活発に成長し、収穫の目安が近づいてくる。  小さな畑なので、売る量もなくほとんどが家庭内で消費された。  稀に、ご近所さんに配ったりもするが、大抵の家でも野菜を育てているので、珍しい野菜などを栽培するなどの、きっかけがなければ、配ることはあまりない。 「よいっしょ!」  雪解けが終わり、畑をトラクターで耕してから春に植えた蕪、柔らかくとても美味しい。  オクラは私の腰ぐらいまで成長し、もう少しで花が咲き始める。  枝豆は肥料は多くあげない、とても強い野菜だ。 聞いた話によると自分で栄養をつくれるそうだが、それは凄いと関心した記憶がある。 「茉莉! 採れたら持ってきて!」 「今いくー!」  両手に野菜を持ち、家の前の水道で土を落とすと、扉をあけて母に手渡す。  朝ご飯にはならない、いつも夜のオカズとして食卓を彩ってくれる。  私は手をよく洗い、爪ブラシで爪の中まで洗い流す。  タオルで拭き終えると、制服に着替えて学校に向かっていく、今日は父はいない、朝から地元の有志が集まって田んぼや公園の草刈りをしていた。  市から時給もでるらしいが、あまり父は乗り気でない。 「いってきます!」  元気にあいさつをして家をでる。 朝の涼しい時間帯が終わると、とたんに暑さがましてくる。 「おはよ! 茉莉」  いつもの場所で待っていると朋絵が挨拶してくれた。 「おはよう! 朋絵」  つい先日、朋絵は念願の想い人に想いを告げると、良い返事をもらえたようで、今は二人楽しく過ごしていた。  私との時間は凄く減ったけれども、幸せそうな朋絵を見ていると、私も幸せになれた。  
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!