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父からの呼び出しがあり、新居へと帰る櫻子と一旦別れ、俺は父の事務所へ向かった。
「失礼します」
社長室へ入ると、革張りのソファに父と、テーブルを挟んで向かい合い座る若い男性がいた。
こいつは・・・
「万里。お前も座れ」
促されて父の隣に腰を下ろす。
「ビヨル所属のアイドルグループ クアイル 元メンバーのシウだ。お前でも顔と名前くらいは知ってるだろう?」
向かい側に座る容姿端麗な青年。透けてるんじゃないかと思うほどの透明感。アッシュカラーに染めた髪と色素の薄い肌、シアン色の瞳が、まるで芸術作品のような雰囲気を醸し出している。
「知ってますよ。ハンサム世界ナンバーワンでしょ、昨年の。それに、人気絶頂アイドルグループを突然の脱退!って最近そのニュースしかやってないですしね」
目の前の青年は眉一つ動かさずに、何を考えているのかもわからない遠い目で、窓の外を見ている。
「で、何故彼がここに?」
「ビヨルを辞めたから雇ってくれと言ってな。OKしたんだが、ウチには売れっ子を山ほど抱えていて、生憎今はマネージャーの空きがない」
「はあ、それで?」
「お前がシウを管理しろ」
「はあ!?無理ですよ!」
マネージメント経験の無い俺に、いきなりこんな大物の管理なんか出来るわけない。
「タレントマネージャーの勉強は一通りしてきただろ。籍だけの幽霊社員を雇う余裕はウチには無い」
嘘つけ!めちゃくちゃ儲かってるのは知ってるんだぞ!
「ボンクラ息子のお守りはもう終わりだ。お前も家族が出来た事だし、真面目に働いて嫁を食わせるくらいは自分で稼げ」
「それは社長が勝手に決めた嫁でしょう!俺は一生独身でも・・・」
「ならお前に貸してある600万、今すぐ返せ」
ぐぅッ!
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