アノニマス

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アノニマス

あなたはまた寝床(ねどこ)を抜け出して 隣の部屋へ消える 麻のカウチソファがふたつ目のベッド 壁の向こうのあなた 扉の外のあなた レースカーテンが(しら)み始めた光を透かし 私のもとに戻るときを教える 寂しいとは言えないから 健康と電気代のせいにして おかしいとあなたに伝えても 二人の危機をあおっても クチは動くけれど あなたの目は私を見ない 言い訳はない 隠し事なんてない やましさの欠片(かけら)もない 小説書いて 詩を詠んで 世界中の誰かに向けて匿名(アノニマス)で 公然とつぶやいてるだけ って…… でも 嘘じゃなければ何してもいい? (いつわ)ってない(だって)罪じゃないの? どうして怒るのかわからないの? あなたが語りかける不特定多数(アノニマス)に 私は含まれていないじゃない 理解できなくたって構わない あなたの言葉を見せてよ 私のことを書いてよ 私に向かって言葉を投げてよ…… あなたの清廉(キレイ)な作品なんて大嫌い そうして私はまた無言と腕力とで あなたの青い枕を殴りつける
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