第一章 生きる勇気

5/9
前へ
/50ページ
次へ
 二度寝から覚めたのは午後3時だった。12時間も寝てしまったらしい。スマホのディスプレイを確認する。未読LINEが……35件?  マジかよ、めんど。てか、気持ち悪。 kaco:『晴美、今いる?』 kaco:『いるなら返事してよお願い』 kaco:『ごめん』 kaco:『大丈夫 ちゃんと私も一緒に怒られるからさ』 kaco:『用事無いなら、会えない?』 すず:『どこで?』 kaco:『え』 すず:『うちの家空いてるよ』 すず:『来れば』 すず:『うちは邪魔なんでしょ。自分の部屋にすっこんどくから』 kaco:『いいの?』 kaco:『あ、でももちろんすずも一緒に話そ』 すず:『気つかわなくていい』 すず:『つーか、うちが話したくないわ』 すず:『なんでいきなり優しくし始めたし』 すず:『お前きらいなんだよ裏表あって見ててイラつく』 すず:『なんでお前が死ななかったわけ?』 すず:『なんでお前じゃなくて香也が死ななきゃなんないわけ?』 すず:『追い応えろよ』 すず:『何んか言えよ』 すず:『なんで香也が診断だよ?』  段々と、すずからのLINEに誤字が増えてくる。 すず:『返事してよ香也ア』 すず:『お願い宇田kだから』 すず:『もどてってjきて』 すず:『なんあであなんdなでななんでなdんでなんでなの』  もはや何と書いてあるのかもわからなくなっていた。下の方までスクロールしてもLINEは読み終わらない。途中から既読マークも消えている。利佳子も見ていられなくなったのだろう。それが今も数秒おきに送られてくる。  ウザい。 はるん:『うるさい』  違う、言うべきなのはこんなことじゃない。 はるん:『何言ってるかわかんない。キモイ』 すず:『hしあね』 すず:『かよおのくぁりsにhしじゃね』 はるん:『日本語使えよ』 はるん:『キチガイはLINEするな』 すず:『わあいうえおあいうえおあいうえおあ』 すず:『たすけれよきゃあや』 すず:『おねがい』 はるん:『マジでうるさい そんなに好きならカヤのとこ行ってきなよ』 はるん:『死ねって言ってんの。理解できる?』 すず:『ビルの屋上で中二女子自殺、自殺者はいじめっ子?:週刊深層オンラインニュース』 はるん:『は なにそれ全然ウケない』 すず:『ビルの屋上で中二女子自殺、自殺者はいじめっ子?:週刊深層オンラインニュース』 はるん:『何がしたいの』 すず:『ビルの屋上で中二女子自殺、自殺者はいじめっ子?:週刊深層オンラインニュース』 すず:『ビルの屋上で中二女子自殺、自殺者はいじめっ子?:週刊深層オンラインニュース』  さすがに恐ろしくなってきた。その後もすずのLINEはやまない。ずっと同じURLが送られてくる。無視していたが、溜まっていく未読件数が気味悪くなり、結局こちらからブロックしてしまった。  人が一人死んだとはいえ、あんなにおかしくなってしまうなんて。  そんなに香也が好きだったんだ。  そっと自分の胸に手を当ててみる。……それこそ、気味が悪くなるほどに、落ち着いていた。  ……すずが羨ましい。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加