Party

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 それから桜木は、私を会場の隅の方に引っ張っていくと、会場を見渡しながら話し始める。 「まず中村だがな、あいつは完全なヒモだ。どうせ、家持ちで、年金で暮らしてるなんて話をしたんだろうが、実態は借家ぐらしのギャンブル狂いさ。手頃な女を見つけては、その家に転がり込んで、汁を吸い続ける、蛭みたいな人間さ」 「まさか」 「見てろよ。あいつは時々、会場から姿を消す。ポケットの中にはラジオが入っててな、競馬だか競艇だかの結果を確認しに行ってるのさ」  まさかと思いながら、中村の姿を目で追うと、たしかに会場から出ていく。そのとき、ポケットに手を突っ込んで、イヤホンのようなものを取り出し、耳に入れるのが見える。  その様子を見て、桜木は、 「ほらな」  と言い、またクックックッと笑う。そして、一頻り笑った後で、また語り始める。 「吉川はな、たしかに会社を経営してるが、経営は火の車だ。年商三億円なんてのは真っ赤な嘘。三億円の借金の間違いだ。あいつは身なりのいい女に寄っていって、出資話を持ちかけては金を出させる詐欺師みたいな男さ。あんたも出資話を持ちかけられたんじゃないのかい?」  私は言葉を失った。たしかに、フリータイムが始まってすぐに、私は吉川から投資話を持ちかけられたのだ。
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