17人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
四郎の家族も誰も読み書きは出来無い。
四郎の父は、漁師の仕事がうまくいっているし、手伝いの子どももいる。何よりも四郎は誰よりも賢く、漁師にするにはもったいないように思えた。
周りの人達にも、寺に預けたらいいのにと勧められた。
四郎は3歳の時に、親戚のおばさんに連れられて山の上にある寺に預けられた。
寺にはたくさんの人達が暮らしていた。
貧しくて食べ物が無くて飢えている人が都にもたくさんいた。
貴族の住む御殿のすぐそばに、飢え死している人がいる。
とても恐ろしい物を見て、四郎は震えた。
明るく社交的でしっかり者のおばさんに連れられて四郎は商売をする所を見た。
貴族の住む御殿にも行った。
誰でもかれでもは入れない、見たこともない大きな立派な門を眺めて裏口から入る。
四郎は沢山の人に挨拶をして、もう誰が誰だかわからない。
でも何故か皆とても優しく、
「 お利口さんだ。」
と、褒めてくれて四郎はとても嬉しかった。
世の中にはたくさんの人達が居て、いろんな暮らしをしているのをその目で見た。
寺に行くのは何日もかかる。
大変な旅だったが生まれて初めての場所や人を見ることはとても楽しかった。
おばさんはいろんな人達とニコニコと笑顔を見せて話し誰もいないところで四郎に言った。
「 四郎、知ってる人知らない人みんなに挨拶をするんだよ。
知らない人には特に気をつけてニコニコするといいよ。
私はずっとそうして来たんだ。」
「うん。」
「それから、返事はハイと言うといいよ。」
「 はい。」
最初のコメントを投稿しよう!