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「……ん……」
ジッと寝顔を見つめてたら、マコがむにゃむにゃと言って、目をゴシゴシ擦った。慌てて寝たふりをする。
目を閉じていると、マコが起きる気配がした。トイレかな? そっと部屋を出て行く。耳をすましたけど、廊下にあるトイレのドアの開閉音は聞こえない。
「……?」
俺はそっと起き上がりマコを追った。マコは外へ出たようだった。音を立てないように玄関を開けて俺も外へ出る。
「うっ……さみっ……」
高原の夜は涼しい。しかも風が吹いてる。長袖Tシャツの袖を伸ばし、腕を組んでマコを探した。
あ、いた。
合宿所の横にある遊歩道入口のベンチ。マコはそこにポツンと座っていた。寒そうに背中を丸めて星空を見上げている。一人になりたいのかもしれない。そう思ったけどマコといたくて近づいた。マコはすぐに足音に気づいたらしい。パッと立ち上がって俺を見ていた。
「あ、……リュウちゃんか。ビックリしたぁ」
「よぉ。寒くね?」
「うん。肌寒いね。でも、明日には又、寝苦しい夜に戻るからさ」
「だよな」
マコは安心したようにベンチに腰掛ける。俺もその横に座った。
見上げる星空は驚く程大きくて、バカみたいに瞬いてて……、言葉を無くすほど綺麗だった。
「リュウちゃん……」
マコがポツンと俺を呼んだ。
「ん?」
「キスしたことある?」
「えっ……そりゃあ……あるわけねーじゃん」
「ぷぷっ」
マコは小さく笑って「ウンウン」と頷いた。
「野球部に入ったが最後、彼女なんて作れないよ。デートするヒマねーもん」
「だよね」
朝も放課後も週末も野球一色だった。校舎の中では早弁して授業中は爆睡。昼は購買まで焼きそばパンをゲットするためにダッシュ。部活が終わってとっぷり日が暮れた帰り道はマコと一緒にラーメンを食べた。
振り返れば隣にはずっとマコがいた。小学生の頃から、いつもマコは俺の味方。一番の仲良し。それが当たり前だったし、これからもずっと親友だって思ってた。大好きな友達。
大好きな……。
他のやつとイチャイチャしてるとモヤモヤしたり……。いつからこんな風に独占欲を発揮するようになっちゃったんだろう。
自分でもよくわからないよ。
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