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君はどこにいる?
毎日毎晩、
君を思い出さない時はないのに。
離れている時間はあまりに長すぎて、
心と身体は少しずつ蝕まれていく。
僕を救い出してくれ。
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フランス貴族の流れを汲み革命後はカナダに渡り財を成した先祖をもつルーカス家の邸宅は、
市内を外れリッチモンドに程近い木々に囲まれた大きな屋敷だった。
今も開かれているパーティーが晩餐会といわれるのはかつての習慣によるものである。
「よく来てくれたね。
こちらはスポンサーのブロワ氏」
ルーカスに引き合わされた初老の男が麗奈の頭から爪先まで眺めてきた。
「彼女が今回のプリマか…これは美しい」
「黒田麗奈です」
「日本に帰らないでこのままカンパニーの所属にならないかい?」
馴れ馴れしく肩に手を置かれる。
「まだ学生の身分ですから」
いくつも会社を持っている実業家というだけあって遠慮がない。
「辞めてしまってもこっちにいい大学はあるよ」
さりげなく離れようとすると相手はまた距離を詰める。
人知れず不快感に耐えていると不意にブロワ氏の手がひょいと持ち上げられた。
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