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フランス生まれのフレデリックは息をするように次々と賛辞をくれるので麗奈は苦笑いしてしまう。
あの人は…きっとこうじゃない。
感に堪えたように一言「綺麗だ」と言うだけ。
物書きなんだから誉め言葉くらいたくさん知っていそうなのに。
アメジストはつけてこなかった。
こちらに来る時も手離せずに荷物に忍ばせて来たがずっとしまったままだ。
物思いにふけっていると突然ガシャンと背後で音がした。
「申し訳ございません!」
給仕がお盆ごとグラスを床に落としてしまっていた。
「お怪我はございませんか?」
「いや」
「割れなくてよかったですね」
麗奈は膝を屈めて落ちてしまったグラスを拾い上げる手伝いを始めた。
「いけませんお嬢様、
私が叱られてしまいます」
「麗奈。
彼に任せれば大丈夫だよ」
かなり歳をとって見えたが足腰もしっかりした給仕は頷いた。
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