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どうしてこんなことになったのだろう。
バンクーバーに行く事を漣の他にいずみと宮台にも報告をしたのだが、
その時奴は言い出した。
「こないだまで一緒に働いてた後輩がカナダ支社にいるんだよ。
そいつに連絡しとくから迎えに来てもらえ」
バスとかタクシーがあるはずなので大丈夫だと言ったのだが、
「いいからいいから」と宮台は強引に後輩の迎えをセッティングしてくれた。
直行便が空いてなくサンフランシスコ経由で夕方六時到着、
それは定刻通りだった。
空港で落ち合う事になっていた宮台の後輩・浦野君は典型的な野球顔で見た瞬間すぐにそれとわかる。
このために仕事を早上がりしてくれたとかで大変申し訳ない。
明日は土曜なので浦野君の部屋に泊めてもらう事になっている(宮台が決めた)。
頭を下げて彼の車に乗り込む。
「あれぇおかしいな」
異変に気づいたのはしばらく走ってからだった。
空港のあるリッチモンドからバンクーバー市内は車でそれほどかからないはずである。
それが二時間以上経っても一向に到着の気配がない。
「さっきもこの風景見なかった?」
「いやぁ、
標識に従って来たつもりなんすけど。
なんせ俺もこっち来たの先月なんで」
マジか宮台。
こっちに慣れてる訳じゃないのか…俺は激しく落胆した。
浦野君は空港から家に行ったのはカナダに降り立った日一回でしかも会社の迎えがあったので道をほとんど覚えていないという。
いかに昼間が長いカナダの夏でもさすがにとっぷりと日が暮れてしまった。
しかもさっきから林道のようなところに入り込んで一向に木立が切れる気配がない。
「浦野君、
仕方ないから警察に電話して迷子になったって言ったらどうかな」
「そうっすねー。
この方向ちょっとヤバいんでさっきの大きい道に引き返しますか」
浦野君はハンドルを切って思い切りUターンした。
「うわっ!!」
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