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でも、
今更何を言ったらいいのだろう。
リンクから先生に引っ張りあげられ、
急かされて外に出るとそこには手回し良く車がつけられていた。
「空港にやってくれ」
先生の言葉に運転手さんが頷いた。
私の心の準備が出来ないままあっという間に到着してしまう。
「急がないと飛行機が出るぞ」
先生は焦らせるような事を言いながら何故か少し笑っている。
やがて人が多いニューヨーク行きの搭乗口前までやって来た。
「大翔!」
よく通る声で先生が叫んだ。
するとよく知る後ろ姿の背の高い人が振り返る。
「あ…」
どこにいても紛れない、
私の眼は釘づけになってしまう。
「麗奈っ…」
私を見つけた彼が急いで人波をかき分けてきた。
「何で…?」
「…先生が無理やり」
横を見ると漣先生の姿は見当たらなかった。
最初から二人だけにするつもりだったのだ。
「でも来てくれてよかった…」
いつも見ていた笑顔に心臓の辺りが苦しくなった。
だけどこの人はもう。
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