邂逅

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車がターンした先に白い服の女がいて浦野君は慌てて急ブレーキを踏む。 停止したと同時に女の姿がフロントガラスからは見えなくなった。 「えっウソ!?」 ぶつかった気配はない。 俺は急いで後部席のドアから外に飛び出した。 倒れている女は気を失っていた。 「えっ…」 ライトに照らされたその顔は、 よく知った相手に似ていた。 俺は一瞬固まってしまうがすぐにそれどころではないと思い直す。 「浦野君! この人車に乗せて」 「救急車呼ばなくて大丈夫っすか」 「ここの住所分からないだろ、 さっき大きい病院の前通ったからそこに運ぼう」 後部席に彼女を横にならせ、 助手席から道順を指示した。 「大翔さん、 記憶力いいっすねー」 今日会ったばかりだが浦野君にはすでに名前呼びされていた。 「ここだこの白い建物」 何とか病院に到着し、 彼を車で待たせ夜間窓口とおぼしきところに駆け込む。 拙い英語で何とか事情を伝えると、 数分後白衣のスタッフらがストレッチャーを運んできた。 そのうちの一人が英語で丁寧に、 「警察に連絡しましたので日本語のわかるスタッフをおつけします」と言ってくれた。 「わかりました」 俺と浦野君は彼らの後をついて行ったが、 処置室の前で待つよう言われ長椅子に並んで座った。 「明日休みで良かったわー」 浦野君は言った。 「ごめんな、 こんな事になって」 「いやいや、 大翔さんは宮さんの親友じゃないすか。 俺を野球部から海外事業部に推薦してくれたのあの人なんですよ」 少し強引だが面倒見のよい宮台は若手に人望があるらしい。 やがて向こうから病院の若いスタッフが警官を伴いやって来た。
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