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「私は祖父が日本人で日本語少しできます」
看護師らしき女性スタッフはこちらが話した事を警官に伝えてくれた。
運んできた彼女はどうやら身体に強い打撲の傷があったが、
車に衝突の痕跡がなかったので放免となるようだ。
「彼は引っ越して来たばかりで道が分からないので案内してほしいんですが」
看護師は通訳してくれ警官がうなずいた。
「やった助かる。
行きましょう大翔さん」
「いや、
俺は彼女についてるから」
「えっ?」
「誰かが側にいた方がいい気がして」
「マジっすか…優しすぎでしょ」
浦野君は車から俺のスーツケースを降ろしてくれた後、
何かあったら連絡をくれるよう念を押して警官に送られていった。
いい後輩だな、
と帰国したら宮台に言ってやりたい。
少々方向音痴が玉にキズだが…
そう思いながら、
彼女が寝かされている部屋に向かった。
*****
ざわざわと沢山の人の話し声や気忙しい足音で目が覚めた。
足や腰が痛む。
きっとあの時痛めてしまった。
そう言えばここはどこ?
真っ白いシーツと掛け具で私は寝かされている。
病院?
首だけを動かしてベッド脇を見ると知らない男が椅子に腰かけたままウトウトしていてびっくりしてしまった。
するとその気配が伝わったのかその人はゆっくり眼を開けた。
そして何かわからない言葉を話す。
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