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グイッと引き寄せられ麗奈は無理やりに肩を抱かれる。
「イヤ…っ…離して!」
思わず日本語で叫ぶが近くには誰もいない。
「ルシアン!」
声の方向に振り返るとフレデリックが険しい顔で足早にやって来た。
「彼女を放せ!」
そしてあまりの剣幕にたじろいだルシアンの腕をいきなり強い力で捻り上げる。
「痛い!
やめろフレディ」
その隙に麗奈は脱兎の如く逃げ去り、
フレデリックは捕らえていた相手の腕を離して言った。
「君の為に忠告する。
また同じ事があったら…」
「何だよ?
父にでも言いつけると?」
掴まれた部分をルシアンは痛そうに擦っていた。
「いや」
驚くほど冷たい声音だった。
「僕は君を許さない」
背後に隠れるようにしていた麗奈は彼の顔を見ていなかったが、
相対していたルシアンは血の気が引いたように青い顔でどこかへ行ってしまった。
「怖かっただろう?」
「ありがとうございます…」
するとフレデリックの手が頭を撫でて来て麗奈は少し驚く。
「君は…君だけは必ず守るから」
「え?」
「ミシェル」
彼はとても小さな声で呟いた。
「今なんて…」
見上げた彼と眼が合った時。
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