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「麗奈?」
耳に慣れた声に思わず振り返る。
「あ…」
忘れようとしても一瞬も忘れた事がない、
彼が立っていた。
*****
「今日はどこに行ってたの?」
ブランシュが大翔に尋ねた。
「ああ」
彼女は名前が分からないので、
白いワンピースを着ていた事から看護師たちにそう呼ばれるようになったのだ。
「今日は、
会わないといけない人の処に行って来た」
そう言うとブランシュの眼の奥が少し揺れた気がした。
顔立ちがアジア系の彼女はフランスの血が少し混じった麗奈によく似ていて、
瞳の色が緑でなければつい錯覚してしまう。
「その人…好きな人?」
「そうだな」
「だけど大翔が悲しそうなのは何故?
何か…あった?」
「うん…」
金髪碧眼の美青年と見つめ合っていた彼女は大翔の姿を認めると逃げるように立ち去って行った。
今度は残された彼と大翔が一瞬見つめ合う状態になる。
その彼も困ったような微笑みを浮かべてすぐに麗奈の後を追いかけていった。
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