【おまけ】ゼロスの葛藤

2/2
383人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 主のいないクラウルの部屋。彼の冷たいベッドに腰を下ろしてみたが、一つ問題が持ち上がった。  クラウルを襲うとなると、ゼロスが主導しなければならない。が、怪我人に突っ込む趣味はないし、何より罪悪感たっぷり状態で更にあの人に突っ込むとか……精神的に無理。  そうなると、動けないあの人の上に乗る、つまり騎乗位となるわけで、自分で後ろを解す事になる。が、そんな事したことがない。  普段はこっちにその気が無くてもなんだかんだと絆されて、そこから先は好き勝手されて気付けば後ろも準備万端状態だ。  どうしよう、かなり恥ずかしくて死ねる。  いっそクラウルが動ける様になるまで待って……ダメだ、拉致監禁が一歩近づきそうだ。  これはもう覚悟を決めるしかない。流血ならまだいいが、そもそも入らないとかだと話にならない。  取り出したのはサイドボードの中にある香油。裸になってクラウルのベッドの上にあがり、四つん這いになって香油を指に纏わせてからそっと後ろへ手を伸ばした。 「んっ」  指一本はわりと平気で飲み込めた。安心したが、悲しくなる。彼と付き合う前はこんなに緩くなかったはずなのに…… 「んっ、変な感じだな」  気持ちいいという感じはなく、事務的に慣らしてみる。違和感しかないが、これで合っているのだろうか?  試しにもう一本指を増やしてみたが…… 「いっ……くっ……」  どうして痛むんだ、普段は気付かないうちに三本だぞ。まだ二本なのに圧迫感と入り口の傷みが辛い。 「気持ちよく、ない……なんで」  いつもはクラウルに蕩けるほどに気持ちよくしてもらっている。ということは感じないわけじゃないんだ。  なのに今はただ辛いだけだ。正直萎えている。  冷静になって、普段どうされているかを思い出す。確か、あまり深すぎないくらいの部分を指で押し上げられて……そうしたら気持ちよく……  クラウルにされている時の事を思いだしながら自分で指を動かしてみる。そうして丁度中指の関節二つ分くらいで指を曲げた瞬間、覚えのある痺れが広がった。 「あぐ! あっ、はぁ……ここ、か?」  確かめるように恐る恐るもう一度そこを刺激してみる。指に僅かにコリコリと硬いものが触れる気がする。そしてそこを押し上げてみるとジワジワと腰が痺れてくる。 「はぁ、あぁ……あっ、んく……」  気持ちいい。それに、入り口が柔らかくなってきた。なるほど、気持ちよくなってくるとここも解れてくるらしい。新発見だ。  けれど何か……何かが足りない。  もう全身汗だくだし、気持ちよくて腰が揺れてしまっているし、愚息は随分元気だ。  なのにイケない。最後の一押しが足りないみたいで射精できない。 「あっ、なん、でっ」  やっぱりあの人に慣らされて、反応仕切れていないのか?  一度指を抜いたゼロスは諦めて自分で慰める事にした。痛いくらい張りつめていて、少し扱けばきっとイケる……はずだった。 「なっ、どうしてイケない!」  自分でしている自分の体だ。なのに上手くイケない。気持ちいい部分を刺激しているはずなのに、やっぱり一押し足りないのだ。  いつの間にこんな体になってしまったんだ。思えばクラウルと付き合い体の関係が始まってから、欲求不満になった事がない。体の限界は何度も迎えているが、欲求不満になる暇はなかった。  どんだけヤッてんだ、あの人……  呆れ半分、怒り大半。知らない間にこの体はあの人に変えられてしまっていたらしい。  疲れ果てているのに愚息は諦め悪くまだ反応中。どうする事もできずに自然と収まるのを期待して枕に頭を沈めたゼロスは、ふと体が熱くなるのを感じて驚いた。  匂いが残っている。その匂いに体が反応している?  それなら!  立ち上がり、クラウルのクローゼットを漁り私服のシャツを引っ張り出して着てみた。袖が少し余るし、丈がまず違う。大きい。 「なんだか、負けた気がする」  こんな所でも微妙に劣等感を刺激される。身長差が十センチ以上だから仕方がないのだが。  そして、匂いが残っている。その匂いだけで体が熱くなるし、ちょっと気持ちよくなってくる。 「……んぅ……ふっ」  試しにさっきと同じように自分で扱いてみると、感じ方がやっぱり深い。というよりも、まるで後ろからクラウルにされている気分だ。 『気持ちいいか?』 「あ、いっ……!」  頭の中が僅かに浮き上がる。自分の手をクラウルの手に見立てるのに苦がない。 『こっちは、どうだ?』 「んぅ! あっ……嘘だろ……っ!」  四つん這いになって一度諦めた後ろを弄ってみても、感じ方が違う。ゾクゾクして、芯が熱くなる。そうして見つけた部分を弄り倒していると、ふと悪魔が囁く。 『前も一緒にしてやろう』  気持ちよく開放されたい。その思いに理性は勝てずに無様な格好で床に転がる。片手を後ろに、片手を愚息に。肩が床について、尻を高く上げる格好になってしまう。 「あっ! あっ、あぁぁ!」  後ろを動かすのと一緒に前を扱いてみると、驚く程にあっという間に高みに達した。自分の手だけじゃなく床にまで白濁が落ちる。崩れ落ちて、荒い息を吐いて暫くボーッとしてしまった。 ……やってしまった。  気が遠くなる思いで呆然と考える。まず、シャツを汚した、洗わないと。床はカーペットを避けただけ偉い。何より体だ、完全アウトだ。後ろと前を同時に自慰って、救いようのない変態行為じゃないか。  後孔がヒクヒクしている。手が汚れているから洗いたい。 「はぁ……」  恥ずかしい特訓はこの日から二日に一回程度行われたそうだ。 END
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!