百式

2/14
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「だって天満もう35じゃん!アイドルに仮になったとして、35でジュニアやるの?子どもに交じって?超ダサいよ」 「ウルセェ!その辺の覚悟だって有るんだ!今だってダンススクールにちゃんと通ってんだよ!」 「そのダンススクールも、社交ダンスじゃん!クソオヤジ呼ばわりされても良いけど、天満のイタさの方がだいぶ来てるかんね!!」  道場に響く悲しき口喧嘩は、がらりとした屋内では反響しむなしく響き渡る。 「良いじゃん!道場継げば安泰だし。親父様も引退できるし天満は就活なしで良いんだぜ!35じゃもう職安だってきついんだよ!現実見ろよ!」 「ううう、うるせぇ!俺だって本当は、、、、、、はうわぁ!!」  それは突然の出来事であった。換気の為に空けていた小窓から集束された突風が天満の下から上に吹き上がった。 ーーーーーーーーはらりと黒い何かが床に落ちた。  それはクソオヤジと呼ばれた父親の前に落ち、思わず涙を流しながら拾い上げた父親は、それをそっと天満に返した。 「、、、、、、、遺伝だよ」  父と息子。二人の同じ頭が窓から入った木漏れ日に交じり乱反射していた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!