妊娠…父親

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妊娠…父親

 振り向いた男の顔を見た瞬間、私は心臓が止まるぐらいの衝撃を受けた。だってそこにいたのは、パパ、あの冷酷な人種差別主義者のパパだったの。  パパは私をDeath Stare(死の視線)で凝視してる!まるでルイージみたい!やめて、お願いだからやめて!実の娘をこんなところで殺さないで!だけどルイージパパは震える私を(にら)んだまま微動だにしない。身体中の震えが止まらない!怒らせていけない人を怒らせてしまったんだわ!  だけど私はパパの無言の威圧に屈しなかった。勇気を出してパパを睨み返して叫んだの。 「パパだったのね!私が精魂(せいこん)込めて作ったダーリンのポスターを破ったのは!なんで、なんでこんなことするのよ!アンタとは親子の縁を切ったはずじゃない!」  パパは何も答えない。だけど顔を見ればパパが私に殺意を抱いていることがあからさまなの。おでこには血管が浮き出て、興奮のあまり脂汗まで出てる。パパは黙ったまま、ダーリンのポスター握りしめてワナワナ震えてるの。いよいよ殺される!私は、私とお腹の中のベイビーの命の危険を察して逃げようとした瞬間、パパがポスターを破り捨てて叫んだの。 「貴様!!親にどこまで恥をかかせるつもりなんだ!貴様は自分がどんなとんでもないことをわかっているのか!あんなケダモノなんかと恥知らずなことをしおって!挙句の果てに、こんな、こんなビラなんぞ作りおって!いい加減にしろ!なにが毛だらけで全身真っ黒な私のダーリンだ!皆んなが貴様が気が狂った、早く病院に連れてけと私に言うんだ!こんなくだらんビラを剥がさなきゃならん私の身にもなってみろ!」
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