妊娠…父親

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 ああ!ああっ!なんて男なの!実の娘の私を公然と侮辱して許せない!私は怒って言い返そうとしたら、また喚き出したの。 「何故お前はここまでおかしくなったのだ!生まれた時から東大出の私の娘として恥ずかしくない教育を受けさせてきたつもりだ!ピアノ、ヴァイオリン、英語、フランス語、ドイツ語!外国に出しても恥ずかしくない程の淑女(しゅくじょ)になるようにと育てたつもりなんだ!お前にもいろいろ思うことはあっただろう。青春期にありがちな悪さをして私を困らせたことが度々あったな。アフリカ人とアメリカ人の両腕にぶら下がって帰ってきたことだってある。だが、だが!今回は限度を超えすぎている!まさか猿と性交したとは!ああ!このことが日本中に知れたら我が一家は終わりだ!!」  ……私は父が喚いている間中ずっと目をつぶってた。もうなにも聞きたくなかった。なんて酷い男なの。こんな下劣な男を父と呼んでいたなんて……。私は自分とダーリンの愛が粉々に否定された絶望とそして愛を否定した父への怒りが沸々と湧き上がってくるのを感じた。この男を殺してやりたい!ダーリンを猿扱いして!猿だからってなにが悪いのよ!人間も猿も祖先は同じじゃない!……だけど、だけど殺す前に一言だけ、一言だけヤツに言い返してやりたくなったの。 「パパ、貴方にはわからないだろうけど、毛だらけで全身真っ黒なダーリンは人間です。ウキー!としか言えないけど全身で私を愛してくれる優しい人なんです!たしかに人種的偏見に囚われたアナタには彼が人間であることすら認められないだろうけど私にはわかる!ダーリンこそ本物の人間よ!人種差別主義に囚われた日本人なんか彼に比べたら動物以下よ!動物とセックスした女と罵られようとも、私は彼との愛を貫いてみせる!そうよアンタなんかに私とダーリンのベイビーは中絶なんてさせはしない!アンタなんかに負けてたまるか!」
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