妊娠…父親

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「パパがいい相手を紹介しようじゃないか。学歴も性格も申し分のない男をだ。本当なら早く紹介したかったんだが。ちょっと顔を合わせるぐらいいいだろ?お前は《上級国民》である私の娘なんから本来選ばれた人間と結婚すべきなんだ。あんな汚らわしい猿なんぞ忘れてしまえ!」    私はもうどうにでもなれという気持ちだった。このままパパの言う通りしてもいいと思った。私は投げやりにパパに言ったの。 「会えって言うならその人にあってもいいよパパ。だけど…だけど、お腹のベイビーはどうするの?……ダーリンと私の赤ちゃんどうするの?」 「そんな(おぞ)ましいものは堕ろさせるに決まっているだろ!こうしている暇はない!さっさと産婦人科に行くぞ!心配するな誰にもバレはしない!医者なんぞお金で黙らせてやる!」  悍ましい?悍ましいですって!?この言葉を聞いてようやく私は目覚めたの。ああ!もう少しで人種差別主義者の戯言に騙されるとこだった!騙されてベイビーまで始末されるとこだった!言葉巧みに私を騙そうとしたってそうはいかないんだから!やっぱり私彼を探す!そして彼に謝って話し合うの。これからの私達の人生を、そして生まれてくるベイビーのことを!今お腹がポコって動いたような気がする。ベイビーがお腹を蹴ったんだわ!パパ絶対帰って来るから僕を殺さないでって暴れてるの!ゴメンね!ダーリンを信じられなくてゴメンネ!私は力強く立ち上がって奴をふりほどいてこう言ったの。 「パパ!危うく騙されるとこだったわ!言葉巧みに私にダーリンを諦めるように仕向けたってそうはいかない!ダーリンはいずれ帰ってくる!私にはわかるの!だってお腹のベイビーがそう言ってるんだもの!もう迷わない!私ダーリンが帰って来るまで待つ!ベイビーと一緒に待つわ!」
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