妊娠…父親

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 パパはもう呆然として突っ立ってるの。口をパクパクさせて明らかに動揺しているの。私とダーリンの絆の深さがこんなにも深いものだったなんて思わなかったんだわ!なにが意志の疎通が出来ないよ!なにが便利なおもちゃよ!なにが獣姦よ!アナタの知ってる言葉ってのは日本語と英語とフランス語とドイツ語しかないんですか?それ以外の言葉を喋る毛だらけで全身真っ黒なダーリンは猿以下だなんて全く人をバカにするのにも程があるわ!コミュニケーションだってカラダで愛情込めてタップリとってたんですからね!私は奴を見返してやったの。どう?これが愛の強さよ!人種差別主義者のアンタなんかに私達の愛は壊せないんだから!  口をパクパクさせてたパパがやっと喋りだしたの。 「お、お前がそこまで狂っていたとは思わなかった!きょ、今日のところは、これで帰る!だが私は諦めんぞ!お腹の子供は絶対に中絶させてやる!それと、毎月の小遣いも来月から無しだ!覚悟しろ!」  それだけ言ってパパはとっとと逃げていったの。小遣いはママから貰うから大丈夫!心配ないわ。会社の給料だってあるし、生活には困らないから安心よ。パパもバカね!小遣いがもらえないぐらいでダーリンを諦めて、お腹のベイビーを中絶なんかするもんですか!全くパパは人種差別主義者の冷血漢だから本物の愛ってのがわからないのよ!愛は障害があればあるほど燃え上がるの。  雨はいつの間にか止んでいた。私はお腹をさすりながら、もう大丈夫、ベイビーママ大丈夫だから!とささやきながら顔を上げて家までまっすぐ歩いて帰った。前を見るとビルの間から夕陽が射している。私はそれが私とベイビーの未来を照らしてくれてるように見えて少し嬉しかった。ダーリンもきっと同じ夕陽を独りで見てるはず。早くダーリンを見つけてこの夕陽を家族三人で見たい。私は心からそう願った。
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