妊娠…思わぬところに救世主?

4/7
前へ
/290ページ
次へ
 あっ、もしかしたら彼は以外にいい人なのかもしれない!ダーリンの存在に傷つきはしたけど、私がダーリンを必死で探してるのがほっとけなくて、愛する私に元気になってもらいたい、そんな一心で必死にダーリンを探してくれたんだわ!でもまだわからない。それで私は新入社員君に聞いたの。用心深く、口調はあくまで優しくしながら。 「ゴメンネ、怒っちゃって。もう一回言うけど、今日はなにしにわざわざここまで来たの?まさかお見舞い?」 「そうです。サル子さんが病気だっていうから、みんな心配してます。僕なんかサル子さんがいなくて仕事も手に付かない状態です。そんな自分に気合を入れるために分厚いヘーゲル全集で頭をぶん殴ったら、気合が入るどころかその場で卒倒してしまいました。僕は認識論の彼岸にまでたどり着いてしまったような気がして、それならいっそレテ河の水でも飲んでしまえと……」  私はまた訳のわからない長広舌(ちょうこうぜつ)が始まると焦っちゃって、もう回りくどいことはやめてバッグの中身を直接聞くことにしたの。 「ありがと。バッグだけどアタシも同じの持ってるよ」 「当たり前です!だってサル子さんのバッグと同じもの買ったんですから!」  コイツは異常にハキハキして答えたの。このド変態!なんなの、このナチュラルなストーカーぶりは!さっさとバッグの中身聞いて違かったらとっとと帰ってもらわないと! 「で、バッグずいぶん重そうだけど何入ってるの?もしかして私へのお見舞い?」  わざと声を弾ませて奴に尋ねたの。自分でも演技が上手!まるで女優みたい(´vωv`*)!すると新入社員はいきなり下を向いて黙りこくっちゃったの。  沈黙が流れる。早くなんか喋ってよ!深い溜め息をついた後、彼はやっと喋りだしたの。 「サル子さんに見せたい物があるんです。それはおそらくサル子さんにとって命より大事なものだと思います。掲示板の情報を頼りに、僕は一日中町中を駆けずり回って探したんです。ここではとても見せられないので僕を部屋まで入れて下さい!」
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加