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 教室の窓際の列の一番後ろの席で眠る相田くんは、いつも眠っている。 彼が起きているのは登下校のときくらいで、後はずっとひたすらに眠っている。  最初はクラスの何人かが起こそうとしていたが、いつの頃からか、相田くんが眠っているのが当たり前の毎日になっていた。  先生たちも、授業妨害するでもなく、義務教育でもない高校で生徒を起こすことはしなかった。  授業を聞かずに成績を落とす生徒は自業自得と言わんばかりの断捨離精神、ということもでもなく相田くんは普通に頭がいい。成績はトップに近いので、先生たちは相田くんが授業中に眠ることを注意しないのだ。  私も、相田くんが眠っているのはいつもの授業風景だと気にしない人間の一人だった。 ―――今、この時までは。
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