第10話 顔

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第10話 顔

「待ってください!」 突然出てきた俺を警戒して兵士達が俺に 剣を向ける。 すると若い風貌の男が俺に向かってゆるりと口を開いた。 「..話をするときはその被り物を取るのが 礼儀ではないか?」 男の言葉に躊躇する俺に、ミヤが 代わりに口入れをする。 「あの...その人は顔に火傷を負っていてとても見せられるような顔ではありません。失礼にあたります」 「...そうか。しかし気にすることはない。 私に偏見の目はないからな」 この男と水掛け論を続けていては際限がなさそうなので静かに溜息をついたあと俺は言われるままにフードをとった。 すると先程まで表情を一切変えなかった男が俺の顔を見た瞬間、目を瞠った。 「お前......その髪の色は...?瞳の色も.. お前の姿はまるで...いや」 男は俺の顔をじっと見つめたあと 一瞬何かを言いかけたが、今度は黙りこんでしまった。 ミヤに視線を向けると 心配そうにこちらを窺っている。 最初にその沈黙を破ったのは兵士だった。 「殿下、この者らをどういたしますか?」 兵士の言葉を聞いて今度は俺が目を瞠る 殿下...殿下ってあの...殿下か... ミヤに目を向けると俺、同様 驚いている様子だった。 まさか男が王子様だとは思いもしなかった俺は、ふらつく身体を支えながら ゆっくりとその場で膝を折った。 すると男が俺に向かって怪訝な顔をする。 「何だ?」 「私は...殿下に無礼を働きました。 何卒お許し下さい。」 俺の言葉に殿下がうっすらと笑みを 浮かべながら答えた。 「確かに無礼だ。しかし罰しはしない。 その代わり私に協力してもらいたい。 二人には私についてきてもらう。 そこで詳しい話を聞かせて貰おうか」 殿下のその言葉に俺は慌てて申し開きを する。 「殿下...その子供はたまたま居合わせた だけでこの一件とは全くの無関係です。 ですので王宮には俺が一人で行きます。」 そう告げるとミヤが泣きそうな顔をしたので俺はそっと笑いかけた。 殿下は俺の言葉に一瞬考えこむ様子を 見せたがすぐに快諾した。 ミヤに背を向けると背後から彼女が俺の名前を呼ぶ声がした。
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