235人が本棚に入れています
本棚に追加
第14話 守りたい人達
昨日はあれから殿下に言われたことをずっと考えていた。
そして結局、俺が眠ったのは朝日が昇ってからだった。
俺はベッドから起き上がると、用意された服に着替える。
薄水色の肌触りの良いシルクのシャツに腕を通し、ズボンを履く。
顔を洗っていると、扉をノックする音が
聞こえた。
続いて扉の開く音がしたので見に行くと
ダークブラウンの髪を短く切り揃えた
メイド服の女性が立っていた。
「おはようございます。
殿下にジュン様のお世話を任されました、
アメリアと申します。朝食の準備が出来ましたので、ご案内致します」
そう言われて案内されたのは、俺がいた
部屋の隣の部屋だった。
アメリアが扉をノックすると、中から声がする。
「入れ。」
中へ入ると椅子に座り本を読んでいた
クラウス殿下が顔を上げ椅子から立ち上がった。
「来て早々悪いんだが、昨日の答えを聞かせてもらいたい」
「......私は...この国の人達をこの状況から
救えるなら喜んで力をお貸しします。」
すると俺のその言葉を聞いたクラウス殿下は
気が抜けた表情をする。
「私は...昨日のお前の様子から見て断られると思っていた。
考えを変えた理由を聞いてもいいか?」
「...正直に言うと私も迷いました。ですが、この国には私の大事な人達もいます。私はその人達を守ってあげたい......
あの...殿下は私が断ったらどうするつもりだったんですか?」
「説得するつもりだったさ。しかし助かった。私に協力するということは遅かれ早かれ命を狙われるだろう。だが安心してくれていい。私の側についたことで傷つけさせはしない」
「分かりました。殿下を信じます。
....それであの聞いてもいいですか?
クラウス殿下は何故隣の部屋に?」
「何故?と言われてもここは私の部屋だ。
この部屋の隣にお前の部屋を用意させた。お前には近くに居てもらわないと困るからな」
殿下の言葉に驚いた俺は表情には出さずに
言葉を続けた。
「あの...ではアメリアさんは?」
「お前専属の使用人だ。出来るだけ少ない人員で事を進めなければならない。安心しろ勿論アメリアも私の手のものだ。それに護衛もつける。お前の髪と眼の色は目立つからな1人で外出はするな」
言い終わると殿下が俺に向かって手招きする。
「立ち話はここまでだ。座ってくれ
朝食を食べよう。」
その後、進められるままに食事を終えると
殿下に俺の護衛だと言う人を紹介された。
「名前はダリウスだ。ダリウスにはお前の
ことを事前に話しておいたから大丈夫だ。」
殿下がそう言うと、その男は無言で俺に頭を下げる。
背は高く180㎝以上はあるだろう。
茶色い髪は短く刈られており、頬に大きな傷があった。
しかし...この国の顔面偏差値はなんでこうも高いんだ...。
俺がじっと観察しているとダリウスと
目が合い睨まれる。
目力が強いせいか睨まれると凄い
迫力だった......
「ダリウス睨むな。怖がっているぞ
見た目はこうだが優しい男だ。安心しろ」
殿下に笑顔でそう言われ俺は取り合えず
頷く。
しかし...安心できそうにない。
さっきから俺のことすごい睨んでくるし......
「...あのダリウスさん、ジュンです。
よろしくお願いします。」
俺は恐る恐る彼に手を伸ばす。
すると案外、素直に手を握り返され
俺は胸を撫で下ろした。
「軽く王宮を案内する。その前にこれを
着ろ。」
殿下がそう言うと、フードが付いた外套を俺に渡してきた。
最初のコメントを投稿しよう!