第16話 進むべき道

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第16話 進むべき道

「殿下この絵は...この壁に描かれているのは...」 「ああ、そうだ。この国の根本、建国の神アトラスタ様だ。お前も一度くらいは見たことがあるだろう。」 「ええ。一度似た絵を見たことがあります。ですが私が見たのは多分この絵のほんの一部分です。しかしここには全てが描かれています。そもそも何故こんな隠れ部屋にこの絵があるんですか?」 「それは、ここが始まりの部屋だからだ。ここに神器が祀ってあった。しかしその神器が忽然と消えてしまった」 そう言われ辺りを見渡すと、近くに祭壇があった。此処に祀ってあったのは真実だろう。 「しかし、何故こんな隠れ部屋に隠す必要があるんですか?見たところ此処には人の気配があるように見えません。この国の神器ならもっと大々的に祀られているものだと思ってました。」 「あぁ。普通ならそうするだろうな。 此処は先々代の時代に作られたものだ。 その時代からこの神器は戦争の火種だったの確かだ。 正直神器にどんな力があるかはハッキリと分からないが、その神器一つで国が揺らぎ戦争が起こっていることは確かだ。そして私は神器が消えたことで神はもうこの地を去ったと思っていた。...お前を見つけるまではな...」 その言葉を聞いて俺は、殿下との出会いは運命に引き寄せられたものではないかと思った。 「私が何故お前にこの絵を見せたかわかるか?お前のその姿こそがこの地の神、アトラスタ様そのものだからだ。初めはあり得ない事だと思った。 しかしお前の力を見てこれは決して偶然じゃない気がした。お前が神の使いだとしても、そうでなくても、これから俺のすることに付き合ってくれるか?」 殿下の瞳の奥から真の光が見えた気がした。その光が俺が進むべき道を照らしてくれる。 俺はそっと殿下の前に跪いた。 「クラウス殿下...私がたとえ何者であったとしても殿下を信じ貴方についていくとお約束致します。」 そう言って、そっと顔をあげると殿下がどこか切なそうな泣きそうな表情で 「よろしく頼む」と一言洩らした。
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