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第18話 記憶
身体を揺さぶられる感覚に目を醒ますと、アメリアさんがいた。
「ジュン様、うなされておいででした。ご気分はいかがですか?」
もう朝らしい。日の光りが眩しい。
「大丈夫だよ。ありがとう」
「ジュン様、何処か痛むのですか?」
そう言われて初めて無意識に涙を流していた事に気付いた。悲しくもないのに...あの変な夢のせいなのか
「本当に大丈夫だよ。アメリアも仕事があるでしょ。心配してくれてありがとう」
「左様でございますか、では朝食の準備を致しますね」
そう微笑んで部屋から出ていった。
あの夢の中の声は何処かで聞いた事がある気がする。しかし、何処で聞いたか思い出そうとすると、途端に靄がかかったように、かき消えてゆく。
考え込んでいると、誰かが部屋をノックした。
「はい。どうぞ」
どうやらその人物は殿下らしい
「おはようございます。クラウス殿下」
「起きていたか。ご所望の人物に会えるよう手配した。明日この国を発つ前に会える。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「ああそれと、ここからの移動手段だが港までは馬車で移動し、そこから船に乗る予定だ。
リスカイアまでは船でも1日はかかる。
まぁ、これでも最短だがな。
今リスカイアとアスカラントは戦争状態にある身の危険を承知しておいてくれ。
この旅は命懸けになるだろう」
「はい。承知しております。私はクラウス殿下についていくと決めました。自分のためにも今は必要なことです。」
「そうか。...それを聞いて安心した。では私は執務に戻る。」
殿下が部屋を出ていくのと入れ替わりに、朝食の準備を終わらせたアメリアさんが戻ってきた。
朝食を食べ終わると、例の部屋に向かう。
周りに人がいないのを確認して、通路に入る。部屋に入ると、あの壁の絵が目に入る。
この絵は、あの夢の中の声と関係があるんだろうか...。
誘われるように壁の絵に触れる。
すると、突然激しい頭痛が起こり、頭が割れそうになる。目の前が酷く揺れて視界が血に染まる。
これは記憶だろうか、誰かが自分に向かって手を伸ばしている。その手は赤く血に染まっていた。手は小さく子供の手のようだった。
顔は、ぼやけていてよく見えない。
『たす...け...て』
そう子供が言うと同時に誰かに背中を強く掴まれる感覚に襲われる。激しい痛みに驚いて壁から手を離すと、視界が元に戻る。
体には何の傷も見当たらない。
...俺は幻覚を見ていたのか...
だけどあの痛みは確かに本物だった。
一体なにが起こってる...。
絵が俺に何かを伝えたがってるのは確かだ。
もう一度確かめようと、恐る恐る壁に手を伸ばす..だが、何も起こらない。
一体何だったんだ。...
お前は俺に何を望んでいる......
建国の神、アトラスタ...
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