232人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
第2話 目覚め
目を覚ますと、見たこともない薄暗い地下のような場所に俺は横たわっていた。
「…あの時トラックに跳ねられたはずじゃ…」
自分の放った言葉にハッとして、慌てて身体を確認する。
しかし、そのどこを見ても傷一つ見当たらなかった。
「どうして...?」
―― 俺はその場で暫く悩んだ末に、一旦
この場所から外に出るための行路を進む事にした。
――20分くらいは歩いただろうか。
やっと小さな光が見えてきた頃、外に出ることができた。
暗い場所にいたせいか、外光が眩しく、
手を顔にかざしながらうっすらと目を開いた。
――すると...そこは日本ではなかった……
焦って辺りを見渡すと、町並みのその殆どは煉瓦造りで出来ていた。
道を行き交う人も日本人のように、黒髪、黒目ではなく、茶色い瞳に茶色い髪をしている。
そして、その顔の彫りは日本人のそれよりも深いものだった。
直後、人々の視線が俺に向いている事に気付いた。
その視線は真っ直ぐ、俺と俺の着ている服に向かっている。
周囲を窺い見ると、街の人々はお世辞にも裕福だとは言えそうにない、簡素な作りの服を着ている。
それは上衣とスカートが繋がったワンピースのような格好で下は布の薄い汚れたズボンを履き腰を紐でくくっていた。
――俺はその視線から逃げるように細い路地へと走り込み、着替えられる服がないかを探す。
――暫く歩いて行くと、煉瓦作りの古い一軒の家に漸く男物の服が干してあるのを見つけた。
俺は、周りに人が居ないのを確認してから物音を立てないようにこっそりと庭へ忍びこんだ。
「服、お借りします。ごめんなさい…」
手を合わせ、そう吐露した後、ロープに掛けてあった服に手を伸ばす。
――そして、直ぐ様その場を去ろうとした
その瞬間、家の扉が音を立てて開いた…。
最初のコメントを投稿しよう!