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第7話 建国の神
それからお互い無言のまま歩いていたが
暫く経った頃にミヤが口を開いた。
「あの...さっきのってジュンお兄さんが
やったの...?」
俺はその問いに須臾、どう返答すべきか迷ったが彼女に嘘をつくことは、何となく憚られたので正直に答えた。
「...えっと。その...俺には不思議な力がある...みたいなんだ」
俺がそう告げた瞬間ミヤが興奮した様子で
手を叩く。
「やっぱり!そうだと思ったんだ。だってお兄さん建国の神様にそっくりなんだもん」
「神...ああ。あの絵の神様か...」
「そうだよ。
言い伝えによると、疫病や飢饉に苦しんでいた民が天に祈りを捧げた時、地上に舞い降りてきて人々を救い王国を建て直したって。...
実はね...今までは私も信じてなかったんだけど、でもジュンお兄さんを見てね、もしかしたらって思って...」
ミヤがあまりにも大それた話を
しだしたので驚いた俺は息を詰まらせた。
「...俺には確かに不思議な力はあるけど
いくらなんでもそれは次元が違いすぎるよ」
違うと手を振って見せる俺にミヤが頬を
膨らませる。
「そんなことないよ!だってお兄さんのその姿に不思議な力はどこからどう見ても神様としか思えないじゃない」
「でもさ.....そもそも、神様って天にいるもんなんだろ?顔が似ていることや少し変わった力を持っているだけじゃ神様にはなれないよ」
「大丈夫!私が導いてお兄さんを
立派な神様にして見せるもん」
そう言うなりミヤが大きく
胸を叩いてみせた。
「ふっ...それは心強いな」
「もう、あたし本気なのよ。
あっ...でも、神様の事を気安くお兄さんなんて呼んじゃダメよね?」
自分で言った言葉に忙しくコロコロと表情を変える彼女に俺は苦笑する。
「俺を立派に導くんだろ?
なら今までのように呼んでくれても構わないんじゃないか?」
その言葉に気を良くしたのか
ミヤは興奮した様子で前へ駆け出した。
「急に走ると転ぶぞ」
後ろから声をかけると言ってる傍から小石に躓き転ぶ。
全く...可愛い外見と違って中身は
とんだお転婆娘だ...
「言わんこっちゃない。ほら見せてみろ」
「大丈夫!ちょっと擦りむいただけだよ」
「血が出てるんじゃないか?」
平気だと言い張るミヤを大人しくさせて
傷口を見ようと手を近付けたその時……。
俺の意思とは全く関係なく指先から傷口に向かって力が流れでてきた。
驚いた俺はすぐに手を離したが
その時にはもう既に傷口は塞がっていた。
「...ジュンお兄さん!怪我を治してくれたの?ありがとう!」
「あ...ああ」
ミヤは俺の意思で治したと思っているみたいだったので、その時はそれ以上何も言うことができなかった。
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