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意識を失っていたのは一瞬だったらしい。
「あわわ、殴っちゃったよ」
そう戸惑う香蓮の声が上から降り注いできたからだ。
どうやら俺は床に倒れているらしく、教室の入り口が見えた。
その霞んだ視界には、教室の前であんぐりと口を開けて呆然としている幼女が映っている。
あれ、高校に幼女? とまだ回復していない頭で漠然とその光景を捉えていた俺は、現状を把握すると「高校に幼女おおお!」と叫んでいた。
即座に俺の危機察知能力が警報をあげる。
討論が全ての学園で暴力行為の現場を目撃された。しかも、この白千条高等学園にいる幼女といえば……。
「み、見ました」
「ちょっ、玉木(たまき)ちゃん、違うんだ」
「牧野くんが香蓮ちゃんを言葉攻めにして痴態をさらさせ、それを視姦して楽しんでいたかと思えば、息を荒くしながら今度は殴るように要求する。SとMを兼ね備えた、一度で二度おいしい、まるで飲食店のキャッチフレーズのようなプレイですね」
「本当に違う!」
俺は即座に否定する。しかし、言葉など届いていない玉木は腕を組んで考え込む。
「これはなんというジャンルなのでしょう。SとMだから次はN? は! それではノーマルになってしまいます。うーん、それともノスタルジックでしょうか。男の子はいつも童心に帰るという意味を示唆したプレイなのでしょうか! これはすごい発明です!」
「俺たちはそんな新ジャンルの開拓はしていない!」
その言葉に玉木は我に返って、あたふたとクビにかかっている笛を取ろうとする。首元で揺れる笛をようやく掴むと、大きく息を吸ってから思い切り吹いた。
ピーという大きな笛の音が放課後の校舎に響く。
「そうでした。感心している場合ではないのでした。白千条高校学園を取りしまる『白きケルベロス』の名において、あなたたちの行いを見過ごすことはできません。風紀取り締まりにより、あなたたちを連行します」
玉木は片手を腰に当て、もう片手の人差し指をこちらに向けて鼻を鳴らした。
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