討論の番人。白きケルベロスの正体

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玉木たちから解放された俺たちが玄関までくると、香蓮が足を止めてこちらに振り返った。 「さてと、私は部活の練習にいくね。大会で上位に入らなくちゃいけなくなったからね」 緊張が解けたのか声が軽い。 「まあ、帰宅部で鍛えた俺の走りに追いつくからな。期待してもいいんじゃないか」 「啓介は素直じゃないなあ」 「お前が素直すぎるんだよ」  顔を突き合わせると、俺たちは思わず笑ってしまった。 「ほらさっさと部活行けよ。俺もこれでようやく帰れる」 「どうせ帰っても、アニメ見るだけでしょ」 「ああ、その通りだ。だが、お前は分かっていない。昨日最終回だった『双星のオリンポス』は、ライトノベル二百万部を売り上げた大人気作品で、サイトの今期アニメランキングでも一話目から常に一位をキープし続けた作品だ。ヒロインのルナとライバルのヒスイの魅力もさることながら驚きのあるストーリー展開には目を見張るものがあり、なんといっても戦闘シーンの映像のあの細かさと迫力。さすがは映像の美しさで評判の高いあのアニメ会社がーー」 「ああ、はいはい。もう分かったよ。その話長くなりそうだからもう行くね」  俺の話を軽くあしらった香蓮は、踵を返して「またねー」と手を振りながら廊下を走って行った。 その脱兎のごとき逃げ足はさすが大会荒らし。次の陸上の大会も問題なさそうだな。俺は安心したように息を吐き、腰に手を当てて彼女を見送った。
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